こうもり事件
冬のある日、
私は窯焚きの準備のため、窯の掃除をしていた。
窯の天井には煙を抜く穴があって、上から蓋がしてある。
窯焚きの前には、その穴も棒で掃除をするのだ。
下から棒でガリガリ掃除しようとすると
棒が、何か柔らかいものに、ムニュッと当たった。
それと同時に「グー」と小さい声がした。
穴の下から懐中電灯で照らしてみると
むこうも、こっちを見ている。
「うひょー」
一瞬、かなり”ビックリ”しましたね、私は。
そいつが「うさぎこうもり」だったわけです。
奴は冬眠中だったためか、逃げ出す気配もない。
このまま焼くわけにもいかないので
こんどは上から棒で押して見たが
奴もびっくりしたのか、今度は押しだされまいと抵抗する。
しかたないので、穴ぎりぎりの太い棒を探してきて
ゆっくりと押し出した。トコロテンのように、、、。。
とにかく、
どうにかこうにか「焼けそこないの、どんぶり」の中に
押しこむことができたので、
龍泉洞に持って行って、逃がすことにしたのであった。
龍泉洞は、うさぎこうもりの「メッカ」なのだ。
想像するに、
奴はきっと、龍泉洞の住人で、
外を飛び回っているうちに、森水窯を発見し
「こりゃ、結構な冬眠場所だわい」なんて考えて、
洞窟のかわりに、窯の中で冬眠していたに違いない。
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