地震

平成 20年 7月24日、夜中1時半頃、ぐらぐらっ!と来た。
ゆっさゆっさゆっさゆっさと揺れました。
震度6ですから相当なものです。
あわてて外へ出た。近所の人も外へ出ている。
何分も続いたような気がしたが、実際は何十秒かだったでしょう。

棚から物が落ちたり、食器棚の中で物が倒れている。
作品のほうは、2、3個割れただけで済んだようだ。
他には被害は無かった。

少し落ち着いたところで、今度は窯が心配になった。
窯は地震には弱いですから。
窯に到着して点検。

愕然!

やられた!

炉壁と天井の間に2cm位の隙間ができてしまっている。
よく見ると他の場所でもあちこち煉瓦がズレている。
天井アーチは煉瓦4個が落ちただけで済んだ。
天井が落ちていたらもっと大変だった。
(窯の作り直しになったでしょうね)
まあ、不幸中の幸いかな。

岩泉は震央なのだが、目立つ被害は、ほとんど無かったようだ。
振幅は大きかったのだが、揺れ方が非常にゆっくりだったので
建物に被害が少なかったのだろう。

普通の地震のようなガタガタガタって感じではなく、
ゆらーりゆらーり、ゆっさゆっさ、と言う感じだった。
この揺れ方が窯の固有振動数にちょうど同調してしまったのだろう。

がっくりして、半月は手が着かなかった。
仕方がないので、しばらくは窯場を片づけたり掃除をしたり、、、
職人の世界で
「どうして良いか、わからない時は、仕事場の掃除でもしてろ」
こんな言葉があるのを思い出したんですね、、、

少し落ち着いたので、窯修理に取りかかることにした。
窯壁の上から煉瓦を外してゆく。けっこう大変。
窯解体中
ここまではがしました。(8月24日)
以前にも何度も修理しましたが、こんなにおおがかりな修理は初めてだ。
ここから煉瓦をつんでゆきます。         

窯修理中
煉瓦積み、どんどん進みます。(9月8日)
こちら側は壁なので、はかどる。
むこう側は、焚き口があるので簡単にはいかないだろう。
考えると、、、鬱、、、。

アーチとイソウール
窯壁とアーチの接触点は、窯の膨張収縮で、かなり動く所なので
目地粘土で固めるのではなく、イソウールという綿を詰める。
(イソウールとは石綿の代替物。
 アスベストの代りに、粘土を焼いて人工的に作った 物で、
 商品名は、カオウール、イソウール、etc。)

煙突上部の調整部分も倒れました。(下部は鉄骨で補強しているので大丈夫。)
煙突倒れた
高さを調整するため、とりあえず煉瓦を縦積みしていた もので、
うーん、これは倒れても仕方ないですね。
「とりあえず」、が20年も経ってしまっていたわけです。
倒れたのは 仕方ないのだが、屋根のトタンも傷んでしまったのが痛い。

今まで さんざん調節してきて、高さも決まったことだし。
この際、ちゃんと積 み直しましょう。
煙突修理出来
で、積み直しました。
なぜか、角がデコボコしていますが、これは、
縦に積んでいた煉瓦を、横に(普通に)積み直した為 です。
ま、御愛嬌、と言うことにしておこう。

煙突の煉瓦を積むときの「目地」は「キャスタブル」です。
キャスタブル
これは耐火性のある、セメントみたいな物。
粘土と違って、水にも強い。だから煙突のように、雨に濡れる所に使う。
ただし10分くらいで固まってしまう超速乾性なので、やっかいです。
勿論セメントと違って、炎にも強い。キャスタブル耐火物と言います。
商品名は「キャスター」、あるいは「キャ スタブル」。

これに対して、窯本体を作る時の目地は「耐火モルタル」です。
耐火モルタル
名前とは裏腹に、これは単なる耐火粘土と砂の混合物です。
なんで、こんなに紛らわしい名前を付けたんでしょうね!
キャスターや普通のセメントと間違えられて困ったことが何度もある。
注文する時は「窯の目地に使う
粘土の耐火モルタル」
と、念 を押したほうが良いです。

20年前に窯 を作った時は地元産岩手粘土で築窯しました。
商品名は日本粘土のAパウダーという耐火粘土で、これに
ハイアルミナサンドという人工の耐火砂を混ぜて目地に使ったのですが
残念ながら、今は掘っておらず、
又、このAパウダー は作品を作る粘土でもあるので非常にもったいない。
(実は窯場に120トン確保してあるのだが(^o^)、、、)
で、上写真のような市販の耐火モルタルを使っているわけです。

焚き口側の修理に入ります。
アーチ支え
四の間の焚き口のアーチを外します。
アーチは外す時にも「アーチ支え」が必要です。
(この写真で、あっちもこっちも煉瓦がズレているのがわかる。)
アーチ煉瓦外しはじめ
アーチ煉瓦外した
このようして煉瓦を外します。(むこう側が見えてますが、煉瓦積み途中です。)

焚口側煉瓦外し終わり
焚口側、ここまではがしました。ここから積んでいきます。(10月9日)

焚き口アーチを積みます。「アーチ支え」を取りつけて両脇から積んでゆく。
アーチ積む
キーストーン
真ん中の煉瓦(要石かなめいし)を打ち込むとアーチは安定します。
(要石は英語でキーストーン。keystoneという言葉はアーチ積みから来た言葉なのだ。)


ようやく上まで来ました。4の間から煙道の所です。
古い煉瓦を使ってアーチ支えも強化しました。
これで、だいぶ丈夫になったはず。(12 月20日)
4の間


4の間の焚き口アーチをつける。
どうやら先が見えてきました。(1 月21日)
4の間焚口

4月15日 修理終わりました。
9ヵ月もかかってしまった。
焚き口側の一の間アーチ支えも土で強化しました。
とりあえず、ほっとした。
これから良い事がありますように、、、
修理後窯全景

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