赤くなったら、くべろ ?

唐津焼で修行中

はじめは、ただ、薪を運んだり、師匠に薪を手渡ししているだけであったが

そのうち、私にも薪をくべさせてくれるようになった。

そのとき

「窯の中が赤くなったらくべろ」と、師匠が言うので困ってしまった。

割木(わりき)をくべるとき、覗き穴から窯の中を覗いて

窯の中の色を見てタイミングをはかるのであるが、

もちろん、くべた直後は覗くことはできない。

猛烈な炎が覗き穴から噴き出してくるので、

くべた直後に覗き穴に目を近づけると目が燃えてしまう。

23分たつと、炎が治まってくるので覗くことが出来る。

23分後は赤いが、くべた薪が窯に熱を与えて温度が上がってくると

だんだん明るく白っぽくなってくる。そのときが薪の「くべ時」なのである。

56分後位かな。

だから、

師匠が「窯の中が赤くなったら、くべろ」と言われるので困っていたのだ。

薪をくべるタイミングは大変微妙で難しく、

タイミングや薪の本数を間違えると温度が上がるどころか

むしろ下げてしまう事にもなるので、やっかいなものである。

私がたびたび間違えるので、そのたびに「窯の中が赤くなったらくべろ」

と言われるので、私の頭がだんだん混乱してきて、困り果てた。

つまり

窯の中が赤い時はまだ温度が低いのである。

温度が上がると、明るく白っぽくなってくるので

そのときが、「くべ時」のはずなのである。

「赤くなったら」というのは、どうもちがう。

師匠が、くべると、ちゃんと温度が上がっていく。

私は一年ぐらいは、失礼にも

「師匠はへんなことを言う人だ」みたいに思っていた。

そのうち、

ある程度、一時間くらいは窯焚きをまかせられるようになると

色々怒られる事も、あまりなくなって、忘れていたが、

友達も沢山できたりして、九州にも慣れてきた頃

ある日、明解に解明された。

九州弁で

「あかく」っていうのは「赤く」でなく「明るく」の意味だったのだ。

つまり

「窯の中があかくなったら、くべろ」って言うのは

「窯の中が明るくなったら、くべろ」っていう意味だったのですね。

そのときは、ホントに胸のつかえが、すーっと、おりたような気がしたものだ。

(
注:標準語の「赤くなったら」は、九州弁では「あこうなったら」又は「あかなったら」である)

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最近

全国アホ・バカ分布考」という本を読んだ。

本稿にも似たテーマで「アホ」と「バカ」の分布を綿密に調査した本です。

ハチャメチャ面白いです。

実は逆で、「全国アホ・バカ分布考」を読んだので本件を思い出し、

これを書いたのです(^^;)

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「くるまをかってきた!!??

ついでに、もうひとつ面白い事を思い出した。

有田の学校に通っていた頃

金武(かなたけ)先生という山水画の先生が

自宅を解放して、地元の後継者に山水画の指導して下さっていたので

やる気十分だった私は、当然、毎回参加していた。

そして

時には、天気の良い日曜日などに

先生と一緒にみんなで近所の山にスケッチに行くこともあった。

スケッチに行く日、

いつもバイクで来ていたおばちゃんが

その日にかぎって乗用車に乗ってきて、

その車に、みんなを乗せて行く、と言うのだ。

私は驚いて、

「そのクルマ、どうしたんですか?」と、聞いたら

おばちゃんは、

「かってきたばい」

と、いうので、私はさらに驚いて、

「えっ!!!、今日のスケッチのために自動車を買ったんですか?」

と聞いたので、みんな大笑い。

なぜかというと

「かってきた」というのは九州弁で「借りてきた」という事なのである。

標準語で「買ってきた」というのなら、九州弁では「こうてきた」なので、

まちがえる事は、無い。

 (現在形だと

 標準語の「買う」は九州弁でも同じく「買う」、

 標準語の「借りる」は、「かる(借る)」で、やはり、まちがえる事は無い)


私は、非常にきまりわるかったが、

しかし

大いに受けた事には、十分に満足したのであります。(^o^)




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