表計算ソフトでゼーゲル式を使いこなそう!


ヘルマンアウグストゼーゲル

ヘルマン・アウグスト・ゼーゲル


焼き物屋なら、
一度はゼーゲル式を習ったことがあるでしょう。

でも、ゼーゲル式計算が、あまりに「面倒くさい」ので
見捨ててしまった方も多いかな、と思います。

電卓で、何十回も、足し算、かけ算、わり算、、、
   しかも、 そうやって計算した調合が
               使えるかどうかわからない、 と言うのに、、、

使える調合かどうか調べるのが、ゼーゲル式なんだから、
               それは当然なんだけど、、、(・.・)


piin

パソコンで計算すれば、とても簡単です。
ゼーゲル式は、表計算ソフトの使い方としては
もっとも簡単なものの内の、ひとつでしょう。

この際、ゼーゲル式を見直してみませんか?
釉薬の、開発、調整に、強力な助っ人となる事、請け合いです。

それでは、さっそく、エクセルを例として説明してみましょう。
、、、すいません、、、エクセル以外、よく知らないもので (^-^;)
    他の表計算ソフトでも、ほとんど同じ筈ですから、、、。
釉薬としては、土灰釉(福島長石:土灰=7:3)を計算します。

まず始めに、原料の酸化物分析値の一覧表を作ります。
(A1)(B1)をあけて、(C1)から順に
SiO2,TiO2,Al2O3,Fe2O3,CaO,MgO,K2O,Na2O,Mn3O4,P2O5と入力します。
   (パソコンでは、化学式に下付数字を使わないのが、カッコイイらしい。
    体裁良くしたい方は、下付数字に設定してください。少し面倒ですが、、、)
他に稀少酸化物が必要な場合は、適宜付け加えて下さい。

(A2)セルに「福島長石」、
(A3)セルに「土灰」、と入力します。
(B1)セルをあけてC2からL2まで、
(B3)セルをあけて、 C3からL3まで順に
それぞれの分析値を順に入力していきます。
分析値は、「セラミック工学ハンドブック」etcの文献にあるでしょう。
もちろん、工業試験場etcで、貴方がお持ちの原料を
分析してもらえるなら、それが理想です。

4行目はあけます。
(A5)セルに「福島長石」、
(A6)セルに「土灰」、と入力します。
(B5)セル(B6)セルに「7」「3」と入力します。

さて、これからいよいよ計算です。
(C5)セルに「=B5*C2」と入力し、計算を実行すると答が出ます。
(B5の所は、B5セルのクリックでも出ます。)
その一行、同じ計算をさせます。

(C6)セルに「=B6*C3」と入力して計算を実行させ、同様に一行同じ計算をさせる、
、、、んでも結構ですが、エクセルの場合、
「フィルハンドル」と言う強力なツールがありますから、是非お試しいただきたい。
フィルハンドルを使うためには、(C6)セルに「=B6*C3」ではなく、
「=$B$6*C3」と打ちこんでエンターを押すと、答えが出ます。
そして、B5からL5まで反転させ(選択し)
右下の十字(フィルハンドル)をL6までドラッグすると同じ計算をしてくれます。
($の意味は「B6」の位置を固定しておけ、という命令です。)
原料が多いときはとても助かります。

   フィルハンドルを使った時のご注意
   フィルハンドルを使った式を修正したいときは慎重を要します。

   式の入っているセルを一回だけクリック。
   Ctrl+/(スラッシュ)
   F2
   Ctrl+Enter
   と順に押して「他のセルの式」を削除します。
   それから、そのセルの式を修正します。
   修正したらCtrl+Shift+Enter。

   どうしてこんな面倒臭い事になっているのか
   私には判りません。(Billに聞いてね!)
   私なんぞ下記(おしまいの方)の「荒技」専門です。(^^;)

excel

一行あけて、次の三行はAの列を空白にします。
(B8)セルに「TOTAL」又は「成分重量比」等と入力します。
(C8)セルに「=C5+C6」と入力します。
エクセルの場合で、原料が多い場合は「=SUM(C5:C6)」という様に書くと
はじめと最後だけで済みます。
そして、一行同じ計算をさせましょう。(ここでもフィルハンドルが使える)
土灰釉の「成分の重量比」が出来上がりましたね。
どうです。なんか学術的(?)な香りがしてきたでしょう。

いよいよクライマックスに突入です。
今出てきた「成分の重量比」を「成分のモル比」に変換します。
(B9)セルに「分子量」と入力し、
(SiO2)から(P2O5)までの分子量を入力します。
分子量は、化学の教科書の周期律表を見て計算します。文献にも載っているでしょう。

それぞれの成分比を分子量で割れば、
成分の分子数比(モル比)が出てくるわけです。
そこで(B10)セルに「T/分子量」又は「モル比」等と入力します。
(C10)セルに「=C8/C9」と入力するとモル比が出てきましたね。
一行同じ計算をさせます。

excel

さあ、ゼーゲル式まであと一歩。
ゼーゲル式の定義とは、
「モル比を、アルカリ金属、アルカリ土族の合計を1として表現する」
ということですから、
モル比全部を、[アルカリ金属、アルカリ土族の合計]で、割れば、よいわけです。

アルカリ金属、アルカリ土族のモル比を合計します。
CaO,MgO,K2O,Na2Oのモル比、すなわち
G10,H10,I10,J10の合計を出します。
どこでもいいのですが、ここでは(B12)に「RO+R2O」と入力し
(G12)から(J12)まで枠でくくって、(G12)に「=SUM(G10:J10)」と入力ましょう。

いよいよゼーゲル式が出てきます。
(A14)に「SEGER」とか何とか、お好きな言葉を、入力します。
(C14)に(=C10/$G$12)と入力し、計算させると、、いよいよ出てきましたよ。
($の意味は、すでにおわかりと思います。)
さあ一行計算させて下さい。  ゼーゲル式の完成です!!!!!

おめでとうございます。     matu take ume

kansei


せっかく出来たのだから、ここで、お遊び。
(B5)(B6)の数字を適当に変えてみて下さい。8:2でも6:4でもなんでもいいです。
アーラ不思議。どんどんゼーゲル式が変わりますね。
変わった数字はちゃんと合っているんですよ。すごいでしょう。
これがコンピュータの威力なんですね。
又、調合比は、なにも7:3とか8:2等、[合計10]になっていなくたって、いいんです。
外割付加の時、とっても便利です。
私の場合、現実的に「実際に調合するグラム数」を入れてしまいます。
実は、これが簡単で便利。


私の計算例では、一番下に、ゼーゲル式をきれいに並べ替えてありますが
これは、もっともらしく「かっこう」を付けただけ。 無くてもOKです。


ところで
「お前、便利便利と言うけどメチャメチャ面倒くさいじゃん!」
と、お怒りの若い衆も多いかと思いますが、、、さにあらず。
このゼーゲル表は、一回作っておくと、別の釉の計画をするときも
少しずつ変更していく事で、簡単に対応出来るのです。
特に、各成分の重量分析値や酸化物の分子量なんて、
新しい釉のシートに、どんどん「コピー&ペースト」で複写しましょう。
つまり、決まりきったことは、初めの一回入力するだけで済むのじゃよ!!


最後にひとつ付け加えておきますが、
表計算ソフトには、やっかいな所があって、
数式を一度入力して計算させると、
その後は、式を変更させてくれない場合がある事です。
エクセルだとイルカにゲコゲコ叱られます。
エクセルを終了することすら出来なくなってしまう時もある。
間違った式を入れてしまって変更したいとき等は、途方に暮れてしまいますね。

そんなときは構わずCtrl+Alt+Delete(CTRL+GRPH+DEL)二回で強制終了し、
(強制終了させると元の状態に戻るから、ご心配なく)
新しいシートに作り直した方が早いよ。
その場合、数式の入っていない所は、コピー&ペーストを使って、楽しましょう。
、、、パソコンなんて所詮は機械ですからね。しょーがねー奴です。


皆さん、パソコンを怖れずに是非とも、がんばってね。


さて、これを、使いこなしてやりましょう。   
使いこなしてやろう

             
森水窯ホームページへ