森水窯のペットは野ねずみです。
ペットと言っても、特に、餌をやったり
世話をしているわけではない。
私が、静かに仕事をしている時に
チョロチョロッと出てきては、うろつきまわっている。
これが家だったら、もちろん退治しなければならないが、
森水窯の細工場の場合、屋内と外の境界がほとんどない
と言っていい位「すきまだらけ」だし、
森の中にあるので
ねずみを退治しようなんて、そもそも不可能なのである。
いつも、知らんぷりしていたら
だんだん馴れてしまった、と言うわけだ。
窯焚き何日目かの、ある夜
やっぱりチョロチョロ出てきた。
夜行性だけに、昼間より大胆だ。
50cm 位まで近寄っても、じっとしている。
理由が、わかりました。
その夜は、かなり寒かったので
窯のすぐそばは、快適だったんですね。
いつもだと、知らんぷりしている私だが
退屈だったので、この時はこいつを「かまいたく」なった。
そこで、煎餅のカケラを野ネズミに
投げてやったら、ひょいとつかんで
カチャカチャカチャ、、、と両手で器用に回しながら食った。
こいつは、野ネズミと言っても、とても小さく、5cm
程しかない。
だから、5mm のかけらを食うにも、かなり時間がかかる。
食いおわると、チョロチョロと、どこかへ行ってしまった。
ガンガンと薪をくべたりして、忘れていたが、
しばらくすると、またやって来た。
そこで、またカケラをひとつ、くれてやった。
何回か繰り返したら、腹が一杯になったらしい。
せんべいのカケラをじっと見て、何か考えている。
そして今度は、それをくわえて、チョロチョロと
どこかへ行ってしまった。
きっと、自分の家に、運んで行ったのでしょう。
そんなことを繰り返しているうちに
夜がしらじらと明けて来たのでした。
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